http://www3.jetro.go.jp/iv/j/fdi/step04/north_a/la/0404zeimu.pdf のHTMLバージョンです。
G o o g l eではファイルを自動的にHTMLに変換して保存しています。
このページのリンク又はお気に入りの登録にはこのURLをお使い下さい:http://www.google.com/search?q=cache:q-XjHudk7dIJ:www3.jetro.go.jp/iv/j/fdi/step04/north_a/la/0404zeimu.pdf+%E6%97%A5%E7%B1%B3%E7%A7%9F%E7%A8%8E%E6%9D%A1%E7%B4%84+%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3&hl=ja&start=10


Googleはこのページまたはページ内のコンテンツとは関連ありません。
これらのキーワードがハイライトされています: 日米 租税 条約 ロイヤルティ 

日米租税条約改正について
Page 1
注:本レポートはジェトロが契約している現地弁護士、会計士等の専門家が作成したものであり、
内容についてのお問合せにはお答えできない場合があります。また、お答えできる場合でも内容
によっては有料とさせていただく場合があります。
税務ガイドラインレポート
日米租税条約改正について
KPMG LLP
シニア・マネージャー 古川武宏
日本とアメリカは2003年11月6日、所得に対する租税に関する二重課税の
回避及び脱税の防止のための新日米租税条約(以下新租税条約)及び条約に関す
る議定書(以下議定書)に署名を行い、その後、両国の議会で承認され2004
年3月30日に批准書の交換が行われました。これにより新租税条約とその議定
書は同日をもって発行することとなり、1972年7月9日発行の日米租税条約
が大幅に修正されることになりました。新条約の主な改正項目は、①源泉所得税
軽減 ②特典制限条項の新設 ③移転価格課税の処分の期間制限などとなってお
ります。
日米租税条約は、国際的な二重課税の排除、締約国間の適切な課税権の配分、課
税当局間の国際協力を促進してきました。今回の改正は、これまでの日米租税
約の内容を全面的に改めるものであり、日本と米国の緊密な経済関係を反映して
積極的に投資交流の促進を図り、併せて租税回避防止のための措置をとること等
を趣旨としています。
条約は、OECD 条約モデルを基本とし、投資所得に対する源泉地国課税を大幅
に軽減するとともに、第三国居住者等の本来日米租税条約の適用が予定されてい
ない者による条約の濫用を防止するための規定等、これまでのわが国の租税条約
では例のない新しい規定が盛り込まれています。
A.クロスボーダー取引にかかる源泉所得税軽減
(1)使用料
今回の改正で最も影響が大きいと思われるのは、一定の使用料(ロイヤルティ
―)に対する源泉所得税を免税とするものです。ロイヤルティ―は、文学作品・
芸術作品・科学的著作物等の使用、使用権利、または著作権、特許権、商標権、
意匠、模型、図面、秘密工程、秘密方式、産業・商業・科学実験等に関する情報
やこれらに類する財産若しくは権利の対価としてのすべての種類の受取金を含ん
でいます。

Page 2
(2)配当
これまでは租税条約の配当に対する源泉税率は、一般配当については15%、親
子会社間配当(持株比率10%以上)では10%でした。新条約では一般配当は
10%、親子会社間配当は5%、さらに親子会社間配当のうち、配当確定日より
遡って12ヶ月間配当支払法人の議決権のある株式の50%超を保有している場
合には免税という、3段階の税率の適用となります。但し、配当受領者である親
会社は、条約に定めるその国(子会社が米国の場合は日本、子会社が日本の場合
には米国)の居住者(適格居住者という)でない場合には、免税の適用を受ける
ことができません。
適格居住者とみなされるためには次の条件を一つでも満たすことが必要です。
①親会社が発行する主たる種類の株式がその国の証券取引所で上場され、かつ通
常の取引が行われており、そのすべての株式の50%以上が、その国の証券取引
所に上場している居住国法人5社以下によって、直接または間接的に所有されて
いる場合。
②親会社が配当支払法人の50%以上の議決権を有している場合で、第3国の居
住者に支払われる損金額が総所得の50%未満であり、親会社がその居住国にお
いて事業活動を行っている場合。尚、この損金額には、通常の事業遂行にあたっ
て支払われる役務並びに物品の対価や居住者である金融機関に支払われる利子等
は除かれます。つまり、損金額として取扱われる支払いとは、独立企業間価格で
はない役務や物品の対価並びに前述の金融機関に支払われる利子等以外の無形財
産に対する支払い(使用料を含む)をいいます。
③親会社が新租税条約の適用を受ける際に、上記①または②のいずれにも該当し
ない場合であっても、条約を適用する国の権限ある当局が、この居住者の設立、
業務の遂行等が条約の特典を得ることを主たる目的とするものではないと認定す
る場合。
租税条約では一定の場合を除き、ミュ−チャルファンドなどの金融商品を運用
する規制投資会社(RIC)または不動産投資信託(REIT)により支払われた配当
金に対しては5%または0%の軽減を認めていません。
(3)利子
利子に対する源泉税は、現行通り10%となっていますが、政府・中央銀行・一
定の金融機関等が受け取る利子所得は免税となります。
以下の図表は上記所得の源泉地国課税の減免に係る改正内容をまとめたものです。

Page 3
条約
条約
配当
親子間配当
持株比率が議決権株式の50%超
10%
 0%
持株比率が議決権株式の10%以上
10%
 5%
一般の配当
15%
10%
利子
政府、地方公共団体、中央銀行、一定の金融機関等
10%
 0%
その他の場合
10%
10%
使用料
10%
 0%
B.不動産及び不動産売却益から発生する所得に対する課税
不動産及び不動産売却益から発生する所得への源泉地国課税基準(資産が存在す
る国にも課税権を与えること)は、新条約でも維持されており、不動産売却益は
その不動産の所在する国で課税されます。さらに新租税条約は、1980年の外
資不動産投資法(FIRPTA; Foreign Investment in Real Property Tax Act)と同様の
規定を採用し、資産の適正市場価格の50%以上が米国不動産である法人または
パートナーシップの持分の譲渡の際にも単なる株式または持分の譲渡として取扱
うのではなく不動産譲渡と同様に課税対象になるものとしています。しかし、不
動産持分を所有している法人が上場会社で、かつ当該法人に対する非居住者株主
(及び関連会社)の持株比率が5%以下である場合は、これら非居住者株主は、
源泉地国課税の対象とはなりません。
また、一方の締結国居住者(例えば日本居住者)が、他方の締約国(例えば米
国)において不動産を所有するパートナーシップ・信託・遺産財団の持分を売却
した場合にも、その売却益に対しても源泉地国課税基準が適用されます。
C.保証及びコミットメント料等への課税
議定書によれば、一方の締約国(例えば米国)から他方の締約国(例えば日本)
の最終受益者に対して支払われた保証料、コミットメント料、及び担保貸し付け
料については、最終受益者が恒久的施設(PE: Permanent Establishment)を通して
前者の国(米国)で事業を行っている場合で、かつそれらの所得が PE に帰属す
る場合を除き、他方の締約国(日本)でのみ課税されると規定されています。
D.その他の所得について
これまでの租税条約では、その他の所得に対する課税を扱っている条項はありま
せんでした。しかし新租税条約では、条約上で他に定められていない所得につい
ては、契約相手国における PE に帰属する所得でない限り、受益者の居住国での
み課税対象となると規定しています。

Page 4
E.米国支店利益税の申告
これまでの租税条約では、日本法人は米国において支店利益に対する所得税を納
めることなく支店形態で事業を行うことができました。しかし、新租税条約では
米国支店利益税を課税することを認めています。ただし、その日本法人が以下の
いずれかの条件を満たしていれば、米国での支店利益税の免除が受けられます。
①当該日本法人が発行する主たる種類の株式が日本の証券取引所で上場され、か
つ通常の取引が行われており、そのすべての株式の50%以上が、日本の証券取
引所に上場している日本法人5社以下によって、直接または間接的に所有されて
いる場合。
②当該日本法人が配当支払法人の50%以上の議決権を有している場合で、第3
国の居住者に支払われる損金額が総所得の50%未満であり、その日本法人が日
本において事業活動を行っている場合。尚、この損金額には、通常の事業遂行に
あたって支払われる役務並びに物品の対価や居住者である金融機関に支払われる
利子等は除かれます。
③当該日本法人が新租税条約の適用を受ける際に、上記①または②のいずれにも
該当しない場合であっても、条約を適用する国の権限ある当局が、この居住者の
設立、業務の遂行等が条約の特典を得ることを主たる目的とするものではないと
認定する場合。
上記のどの免除規定にも該当しない場合、5%の支店利益税が課せられます。
F.特典制限条項の新設
新条約には、投資所得に対する源泉地国課税の減免に伴い条約特典の濫用の恐れ
が増大することから、これを防止するために条約上の特典を享受できるものを一
定の要件を満たすもの(適格居住者等)に限定するとする規定が新たに加わって
います(新条約第22条)。米国では既に他国との租税条約で特典制限条項
(Limitation of Benefits, LOB 条項)を盛り込んでいますが、日本が締結する租税
条約としては初めて導入される条項であります。
G.移転価格課税の期間制限 (新条約第9条3項)
これまでの租税条約では移転価格課税の期間が制限されていなかったため、米国
は、課税年度終了から長期間が経過した後においても移転価格課税の処分を行う
ことができました。そのため、納税者は関係書類を長期にわたり保存する必要が
ありました。このような状況を回避するため、新条約は、移転価格課税の処分に
関し期間制限を設け、課税年度終了時から7年以内に調査を開始しない場合には、
その処分を行うことができないこととしました。

Page 5
交換公文では 適切に各国の課税権を配分し、二重課税を回避することを目的と
して作成された OECD 移転価格ガイドラインに従った移転価格税制の執行を各
国課税当局に求めています。その結果、これまで日本の税務上認められていなか
った取引単位営業利益法(TNMM、類似の独立企業の事業活動における営業利
益率と比較し独立企業間価格を算定する方法)が、無形資産の絡む取引が今後増
えることが予想されることからも、我が国の独立企業間価格の算定方法の一つと
して新たに加わっています。さらに、議定書では、独立企業間価格の原則を確認
するとともに、設定価格の比較可能性に影響を与える要因が列挙されています。
H.国内法の実質的な改正等にともなう問題解決のための協議
一方の締結国において条約に関連する国内法の改正が行われることにより、条約
が前提としていた条件に変更をきたす場合があります。この場合には、新条約は、
条約締結の趣旨が損なわれることがないようにするために、他方の締約国に対し
て特典の均衡を回復するための協議を要請する権限を与えるとともに、要請を受
けた一方の締結国は、その要請を受けた後3ヶ月以内に協議を行わなければなら
ないこととしています。これまで我が国が締結した租税条約にはこのような規定
は含まれておりませんでした。
I.発効時期
租税条約は2005年1月1日より適用されますが、配当・利子・使用料に対
する新源泉徴収税率については2004年7月1日以降の課税額に対して適用さ
れます。
以 上